留学の見積もりを取ると、たいてい思ったより安い数字が出てくる。 そして渡航が近づくにつれて、少しずつ増えていく。
これは多くの場合、誰かが嘘をついているからではない。 見積もりは「その会社が手配する範囲」の金額であって、あなたが払う総額ではないからだ。
この記事は、相場を並べるためのものではない。相場は各社が詳しく出している。 ここで書くのは、見積もりを受け取ったときに、自分で何を足し直すかだ。
見積もりに入っていることが多いもの
会社やプランによるが、おおむねこのあたりは含まれている。
- 授業料
- 滞在費(ホームステイ、寮など。手配料と実費が分かれている場合がある)
- 入学金・登録料
- 空港送迎(含まれない会社も多い)
見積もりの外に出やすいもの
問題はこちらだ。見落とされやすい順に並べる。
先に前提を書く。以下の金額は渡航先で大きく変わる。 アジア圏(フィリピン等)と英語圏(米国・オーストラリア等)では、項目によって数倍違う。 「留学費用の相場」を一つの数字で語ることはできない。だからここでは、 単一の目安を出さず、渡航先ごとに分けて書く。
数字の種類を分けておく。 この記事には2種類の金額が出てくる。
- 公的機関が公表している額(ビザ申請手数料、医療付加金)。出典のURLを示せる。改定されれば変わるが、その時点の正解が存在する
- 市場の目安(航空券、保険、生活費)。売り手ごと・時期ごとに違い、単一の出典を示せない。下の数字は当時確認できた範囲の目安であって、公表された基準ではない
後者を前者と同じ精度で読まないでほしい。目安の数字は、自分の見積もりが桁外れでないかを確かめるためだけに使う。
1. 航空券
見積もりに含まれない会社が多い。行き先で倍以上違う。
- アジア圏(セブ等): 往復およそ 5万〜10万円
- 米欧線: 往復およそ 15万〜35万円
米欧線が高いのは燃油サーチャージが乗るためで、 2026年9〜10月発券分は欧米線の往復だけで約10万〜11万円が上乗せされる水準にある。 夏休みと年末年始はさらに上がる。留学の開始時期は、たいてい高い時期と重なる。
2. 海外留学保険
渡航先と年齢で大きく動く。 医療費の高い国ほど高い。
- 米国・1年・50歳未満: おおむね 20万〜30万円
- アジア圏・1年: 11万円台の例もある
- 50歳以上で米国の場合、30万円を超える商品が多い
学校側が加入を必須にし、指定の保険しか認めない場合もある。 クレジットカードの付帯保険で代替できるかは、期間と補償内容で変わる。
3. 生活費
金額としては、ここが最大になることが多い。 そして一番読みにくい。
食費・交通費・通信費などの1年分で、確認できた目安はこのあたり。
- 米国: 食費・交通・通信の合計で年85万円前後
- オーストラリア: 年70万〜105万円(都市と住み方で動く)
- 寮で食事込みのアジア圏: 年40万円台まで下がる
つまり40万円台から100万円超という2倍以上の幅がある。 平均値を自分に当てはめると必ず外れる。 行き先と住み方を決めてから積み上げるしかない。
4. ビザ申請と関連書類
ここは渡航先で桁が違う。 一つの目安でまとめると必ず外れる項目だ。
各国の公式情報から確認できた申請手数料そのものは、おおよそ次のとおり。 初出は2026年9月4日。2026年9月8日に各国の公式ページで再確認した結果を「再確認」欄に書く。
| 渡航先 | 申請手数料 | 円換算の目安 | 再確認(2026-09-08) |
|---|---|---|---|
| カナダ(就学許可) | CAD 150 + 生体認証 CAD 85 | 約2.6万円 | IRCC手数料一覧で一致を確認 |
| 米国(F-1) | US$185(MRV)+ US$350(SEVIS I-901) | 約8万円台 | 再確認できず(下記) |
| オーストラリア・語学学校(ELICOS) | AUD 2,050 | 約23万円 | 公式ページに額の掲載なし(下記) |
| オーストラリア・大学等 | AUD 2,500 | 約28万円 | Subclass 500に「From AUD2,500.00」と記載 |
| 英国(Student visa・1年) | £558 + 医療付加金 IHS £776/年 | 約28万円 | gov.ukで£558、IHSで学生£776/年を確認 |
英国のIHSは保険ではなく申請時に必須の付加金で、海外留学保険とは別に必要になる。
オーストラリアの語学学校(ELICOS)の額について。 公式のSubclass 500のページは、費用を「From AUD2,500.00(限られた場合に減額あり)」と書き、 減額の対象として「ELICOS and Non-Award sector」の申請者を明記している。 減額後の具体的な額はこのページに掲載されておらず、Visa Pricing Estimator で算出する形になっている。 上表のA$2,050は初出時(2026年9月4日)の数字で、 2026年9月8日には公式ページ上で再確認できなかった。語学留学を検討している人は、 金額を当サイトの表ではなく見積もりツールで確認してほしい。
米国の額について。 2026年9月8日、travel.state.gov と ice.gov のいずれも
当サイトからの自動アクセスを拒否したため、再確認できていない。
上表の数字は初出時のもので、現在も同じかどうかはUNKNOWN。
米国国務省・ビザ手数料と
I-901 SEVIS Feeをブラウザで直接開いて確認してほしい。
また米国では2025年10月から Visa Integrity Fee US$250 が制度化されているが、
在外公館での徴収運用が揃っていないとの報告がある(UNKNOWN)。
これに健康診断、証明写真、書類の翻訳・公証、大使館のある都市への交通費が上乗せされる。
金額は必ず渡航先の大使館・移民当局の公式ページで確認してほしい。 ビザ費用は改定が多く、この記事の数字もいずれ古くなる。
5. 為替
見積もりの円換算は、作成時点のレートで計算されている。 支払いが数か月先なら、そのときのレートは違う。円安に振れれば総額が増える。
見積もりを見るときは「いつ時点の、いくらのレートで計算していますか」と聞いておくといい。 まともな会社なら即答できる。
6. 帰国後
意外に忘れられる。帰りの荷物の送料、現地で解約できなかったものの残額、 そして帰国してから次の収入が入るまでの生活費。 休職や退職をして行く場合、ここが計画から抜けていることがある。
見積もりを受け取ったときに聞くこと
金額そのものより、構造を聞くほうが有効だと思う。
- この見積もりに含まれないものを、全部挙げてください
- 学費・滞在費・手配料・保険を分けて書いてもらえますか
- 為替レートはいつ時点の、いくらで計算していますか
- 申込後にキャンセルした場合、何がいくら戻りますか
- 同じ学校に直接申し込んだ場合と、何が違いますか
全部に答えられる会社なら、金額が多少高くても付き合う価値がある。 逆に、内訳を分けて出せない会社は、見積もりの精度もそこまでだと考えていい。
なお「手数料0円」をうたう会社の収益がどこから出ているかは、 別の記事に書いた。仕組みを知ってから見積もりを見ると、 数字の意味が変わって見える。
総額を1枚の紙に書く
やることは単純だ。見積もりの数字を、そのまま信じない。 上の6項目を自分で足して、1枚の紙に総額を書く。
そのうえで「この金額を、誰が、いつ、どうやって払うのか」を決める。 私は親に出してもらったので、この計算を自分でやらなかった。 それが後でどう効いたかは連載に書いている。
この記事の出典
公的機関が公表している額(2026年9月8日に再確認したもの)
- カナダ移民・難民・市民権省(IRCC)— Citizenship and immigration application fees: Fee list:就学許可 CAD 150/生体認証 CAD 85(確認日 2026-09-08)
- 英国政府 — Student visa:£558(英国外からの申請・英国内での延長とも同額)(確認日 2026-09-08)
- 英国政府 — Pay for UK healthcare as part of your immigration application:学生および扶養家族 £776/年(確認日 2026-09-08)
- 豪州内務省 — Student visa (subclass 500):「From AUD2,500.00」、ELICOS・Non-Award 部門の申請者に減額あり(減額後の額はこのページに掲載なし)(確認日 2026-09-08)
- 豪州内務省 — Visa Pricing Estimator:ELICOS の実額はここで算出する
再確認できなかったもの
- 米国(MRV US$185、SEVIS I-901 US$350、Visa Integrity Fee US$250):2026年9月8日、国務省・ICE とも当サイトからの自動アクセスを拒否したため未確認。数字は2026年9月4日時点のもの
- オーストラリア ELICOS の AUD 2,050:2026年9月8日時点で公式ページ上に掲載を見つけられず
出典を示せないもの
航空券・海外留学保険・生活費の金額(本文1〜3)は、公表された基準ではなく市場の目安です。 売り手・時期・条件で変わり、単一の出典を示せません。この記事では出典URLを付けていません。 桁の感覚をつかむためだけに使ってください。
ビザ手数料の初出は2026年9月4日、再確認は2026年9月8日です。為替は1USD≈155円、1GBP≈210円、1AUD≈112円で換算しています。特定の会社の見積もりを保証するものではありません。 ビザ手数料は改定が頻繁で、上表も更新が必要になります。 実際の費用は渡航先・時期・学校・年齢・為替で変わります。必ず公式情報と各社の見積もりで確認してください。