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親をどう説得するか。お金を出す人が本当に心配していること

親の反対は「留学が嫌」ではないことが多い。何を心配しているのかを分解し、説得ではなく合意にするための資料の作り方を、出してもらった側の視点で書く。

公開 2026-09-04読了 約3分種別 現在の情報(確認日つき)

留学の相談で、意外と大きいのに、あまり記事にならない話がある。

親をどう説得するか。

留学エージェントはこのテーマを正面から扱いにくい。彼らの相談相手は本人で、 お金を出すのは親であることが多いからだ。この非対称は、当事者からは書きにくい。

私は1996年に渡米したとき、学費も生活費も親に出してもらった。 出してもらった側として、今になって分かることを書く。

反対の理由は、たいてい留学ではない

「留学は反対」と言われたとき、本当に反対されているのは留学そのものではないことが多い。 分解すると、だいたいこの4つに分かれる。

1. お金

いちばん多い。そしていちばん言い出しにくい。 「うちにそんな金はない」と言うのは、親にとって簡単なことではない。 だから「今じゃなくていいだろう」「もっと考えてから」という言い方になる。

これは、金額の話をこちらから先に出すと変わることがある。 総額と内訳を自分で調べて持っていくと、「反対」が「相談」に変わる。

2. 帰ってきてからの心配

「留学したあと、就職はどうするのか」。 親の世代には、留学が就職で不利になるという実感がある人もいる。実際、そういう時期もあった。

ここは正直に言うしかない。留学すれば就職が有利になる、という約束はできない。 私自身、帰国後の就職で留学が決定的に効いたとは思っていない。 効いてきたのはずっとあとだ。

3. 安全

治安、病気、事故。ニュースで見る海外は、たいてい悪いことが起きている場所だ。 親が心配しているのは統計ではなく、連絡がつかなくなることだったりする。

これは対策が具体的に書ける分、いちばん解消しやすい。

4. 寂しさ

口には出ない。だが確実にある。 特に、子どもが遠くへ行くことが「もう戻らない」ことに感じられる場合がある。

これは説得の対象ではない。説得しようとすると、たぶん失敗する。

「説得」をやめて「合意」にする

留学の話を切り出すとき、多くの人は自分を弁護する側に立つ。 すると親は反対する側に立たされる。この構図になった時点で、話が長くなる。

同じ側に立って、一緒に見る資料を作る方が早い。

親に見せる資料に、必ず入れる1枚

いろいろ作るより、これが1枚あるかどうかで空気が変わる。

「うまくいかなかったときにどうするか」の紙。

  • 合わなかったら、何か月で帰ってくるか
  • そのとき、いくら戻ってきて、いくら失うか
  • 帰ってきたあと、何をするか

留学の資料は、うまくいく前提のものばかりだ。 だから失敗した場合を先に自分で書いてあると、親は「この子は考えている」と受け取る。

逆に言うと、これが書けないなら、まだ計画が固まっていないということでもある。 親を説得するためではなく、自分の計画の穴を見つけるために書くのが本当のところだ。

そのほかに用意しておくといいもの

項目 中身
総額 学費・滞在費だけでなく、航空券・保険・生活費・ビザ関連まで(書き方)
お金の出どころ 誰がいくら出すか。自分の貯金はいくら入れるか
連絡の方法 週に何回、どうやって連絡するか。緊急時の連絡先
現地の体制 学校の日本人スタッフの有無、滞在先の形態、保険の内容
帰国後 何をするつもりか。決まっていないなら「決まっていない」と書く

最後の項目を空欄にできるかどうかが、けっこう大きい。 分からないことを「分からない」と書いてある資料は、全部埋まっている資料より信用される。

出してもらった側として、あとで分かったこと

私は親を説得した記憶があまりない。反対されなかったからだ。 恵まれていたと思う。

ただ、出してもらったという事実は、そのあとずっと残った。 帰国して、思い描いた仕事が経済的に成立せず、食えなくなった時期がある。 そのとき自分を責めた理由の一つは、あの学費に見合うものを何も返せていないということだった (詳しくは連載に書いた)。

だから、これから親に話す人には、ひとつだけ勧めたいことがある。

「いつ、どうやって返すか」を先に決めなくていい。ただ、返すつもりがあることは伝えておくといい。 金額のことではない。それを言っておくと、あとで自分が楽になる。

親は、たぶん返してほしいとは思っていない。 それでも、言っておくと後の自分が助かる。私はそれを言い損ねた。


この記事は筆者の個人的な体験と考えに基づくものです。家庭の事情は人それぞれで、 ここに書いたことが当てはまらない場合も当然あります。

HK
筆者: 加藤寛明

1996年、新潟の高校からアメリカへ。米国の大学でジャーナリズムを専攻し卒業。帰国後は日本で働いたのち、ベトナムで就職。2016年からベトナム在住、日系企業の管理職。留学の手配や学校の紹介はしていません。プロフィールと編集方針