留学の情報を探すと、勧める記事ばかり出てくる。当たり前だ。 書いているのは、留学を売っている会社か、留学して良かった人だからだ。
私は1996年に留学して、そのあと長く遠回りをした。 だから「行かない方がいい場合」も、たぶん普通の人より具体的に言える。
先に断っておくと、これは脅しではない。条件が合えば行った方がいい。 ただ、合わないまま行くと高くつく。
1. 借金をして行く場合
これがいちばん強く言いたい。
留学は投資だと言われる。だが回収がいつになるかは誰にも分からない。 私の場合、留学が生活の役に立ち始めたのは10年以上あとだった。 その間に返済が始まっていたら、たぶん潰れていた。
奨学金や教育ローンが悪いという話ではない。返済開始の時期と、 帰国後に確実に入る収入の当てが、紙に書けるかという話だ。書けないなら、時期を変えた方がいい。
私は親に出してもらった。だからこの怖さを実感として語る資格はないかもしれない。 ただ、出してもらった人間として言えることはある。 お金を出した人は、あなたが思うより長くその判断を覚えている。
2. 「何かが変わる」ことを期待している場合
留学すると環境は変わる。だが中身は勝手には変わらない。
日本で人と話すのが苦手な人は、海外でも苦手だ。言語が変わっただけで人格は変わらない。 日本で勉強しない人は、海外でも勉強しない。監視がなくなる分、むしろ悪化することがある。
環境の変化が効くのは、変えたい具体的な何かがある人だ。 「英語で仕事の会議を回せるようになりたい」は具体的。「変わりたい」は具体的ではない。
私の動機は「東京が嫌だ」だった。これも具体的ではない。 だから行き先で目的を作り直すことになった。それができたのは運がよかっただけだと思っている。
3. 帰国後の居場所を、行く前に手放す場合
会社を辞めて行く。関係を切って行く。それ自体は選択肢としてある。
問題は、留学中に「帰る場所がない」という事実が効いてくることだ。 海外での生活は、慣れるまで確実にきつい。そのきつさに、帰り道がないという圧が重なると、 判断がおかしくなる。焦って進路を決めたり、合わない環境に居続けたりする。
休職で行けるなら休職で行く。籍を残せるなら残す。**戻る場所を持ったまま行く方が、 現地で強気になれる。**これは精神論ではなく、選択肢の数の話だ。
4. 期間が短いのに、成果を大きく見積もっている場合
1週間や2週間の留学に意味がないとは思わない。判断材料としては十分だ。 自分が海外で暮らせるかどうか、その環境が好きかどうかは、1週間でだいたい分かる。
ただし1週間で英語ができるようにはならない。当然だが、 パンフレットの写真を見ていると、なぜかできるようになる気がしてくる。
短期で行くなら、目的を「試すこと」に置いた方がいい。 成果を「英語力」に置くと、帰国後に必ず落胆する。
5. 誰かに勧められて、自分では決めていない場合
親、先生、恋人、エージェントの担当者。誰が勧めたにせよ、 現地で毎日を過ごすのはあなた一人だ。
きつい日に「なんでここにいるんだっけ」と考える瞬間が必ず来る。 そのときに自分の言葉で答えられないと、時間が長くなる。
それでも行くなら、決めておくこと
上の条件に当てはまっても、行きたいなら行けばいいと思う。 私も条件を満たしていたとは言えない。ただ、これだけは先に決めておくといい。
- 総額と、それを誰が払うか。 見積もりの外に出る費用も含めて (別記事に書いた)
- 帰ってきたときに、何があれば「行ってよかった」と言えるか。 英語力か、学位か、経験か
- 最悪の場合の撤退ライン。 合わなかったら何か月で帰るか
3つ目を決めている人はほとんどいない。だが決めておくと、現地での判断が軽くなる。 「いつでも帰れる」と思える人の方が、結果的に長く続く。
最後に
留学は、行けば必ず報われるものではない。私は報われるまでに17年かかった。 それでも行ってよかったと思っているのは、 留学が私に「外に出る」という選択肢を残していったからだ(連載に書いた)。
条件が合わないなら、時期をずらせばいい。留学は逃げない。 30代でも40代でも行っている人はいる。急いで条件の合わないまま行くことだけが、取り返しにくい。
この記事は筆者の個人的な体験と考えに基づくものです。 費用・制度・ビザの要件は渡航先と時期で変わります。実際の判断は最新の公式情報でご確認ください。